『右岸』 辻仁成
『冷静と情熱のあいだ』で
男女の関係を男女の小説家が男女の視点で描いたように
辻さんと江國さんが再び組んで『右岸』と『左岸』を書いた。
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辻さんの『右岸』を読む。図書館で取り寄せて手元に届き
本の分厚さと二段構成という様相に大学で読んできた
古びた哲学書を思い出した。
久々の長編をまえにちょっと構えてしまったし、内容も一人の男の
人生50年を描いたものであまり乗り気にならなかった。
読んでも読んでもページが減っていかないことも
ページを気にしてしまう程度の興味しか沸いていないことにも
多少げんなりしつつ、それでも結末が気になるあたしは
辛抱して読み続ける。
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全522ページで506ページに差し掛かってようやく
あたしはこの本の面白みを感じることができた。
本当に最後の最後、そう、主人公の男の晩年、50歳になったときに
涙が出た。
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なぜ涙が出たのか、考えているとふと、大学4年のときになくなった
祖父のことを思い出した。
23歳のあたしにとってはじめての身近な死だった。
祖父の死はごく自然な寿命を全うした死だった。
それ以上でもそれ以下でもない「死」だった。
それでもそのとき、感じたことは、人生を生き抜いた一人の人間の重み、
その人生の重みだった。
残った者たちの弔いも、「お疲れさまでした」というものだったということ。
人の尊さはその歴史にあるのだと、
80年ちかくを生き抜いた人間への畏敬の念をはじめて知った。
小娘なんぞが想像だにできないもの、できるだなんておこがましくて言えないもの。
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そんな風に思ったことを、この小説の本当に最後の部分を読んで
涙がでて、思い出した。
主人公の男の、生き抜いてきたことへの畏怖だったのかもしれない。
壮大な小説だった。
『右岸』の主人公の男の心から消えることのなかった女の人生は
どんなものなのか、『左岸』が楽しみだ。
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